「そうそう。先日は正宗さんところで新年会があったんでしょう?」
「え?」
場面は “八百萬屋”の居間へと戻って。
チョコプレッツェルやらスナック菓子やら、
はたまた、ハスの実あんの羽二重餅やらきんつばやら、
栗入りきんとんをバームクーヘンぽいスポンジで巻いたミニロールケーキとか。
買って来たもの、五郎兵衛が用意したらしいもの、
紅ばらさんが頑張って作ったらしいもの、などなどを取り集めた
和洋ごちゃまぜのお菓子が広げられているのへ手を伸べつつのお喋りは引き続いており。
「三が日の最後のお話?
けどあれは、岡崎五郎さんって人のお家だけど?」
正宗なんてお名前じゃないよと訂正したところ、
「うん、あの有名な刀匠と同じ名前なんで、
画家として色物扱いされてはかなわないってことで、
普段は“五郎さん”て名前で通してなさるけど。」
判っておりますよと、ひなげしさんがはんなりと続ける。
「え? なになに、ヘイさんご存知なの?」
てっきり自分の実家のかかわりしかない人と思い込んで黙ってたのに。
そんな自分より詳しい言いようをひなげしさんから聞かされて、
何で何で?とびっくりしたまま問い詰めれば、
「だって、正宗さんといえば、ウチのおじじ様とも知り合いだもの。」
幼い平八に工学関係のあれこれへの関心を植え付けた、海外流出組の天才博士。
そんな畑違いな祖父殿が、七郎次は画家としてしか知らぬあの屋敷の当主と知己同士だったそうで。
「昔っから機巧(からくり)ものに関心がおありで、
そりゃあ精巧な設計図をお引きになったって話をよく聞かされたもので。」
私も直接会ったことがあるってお人じゃないんですがと、
誤解のないようにと付け足してから、
「昔は というか、ウチのおじじ様について回ってた若かりし頃に発案なさった、
そんな破天荒な奇天烈なと笑われたあれこれ、
案外と今のITや何やへ応用が利くかもしれないって、
そういうお話も聞かされてたからvv」
「ふ、ふ〜ん。」
ということは、
書画方向の関係筋からではない“くせもの”が、
潜入していたのかも知れなかったんだなぁなんて、
あの晩の勘兵衛のお仕事の中身、今になって判明したよな感慨に浸っておれば、
「何ですよ。もしかして、そんなお屋敷で何かあったんですか?」
「え? まさかまさか、何にもあるわけないじゃないの。」
あわわと慌てたのが却ってまずかったか、
じゃあ、私、佐伯さんに訊いてみよっとと平八がスマホを取り出せば、
久蔵も自分のスマホを手に取り、おそらくは結婚屋こと丹羽良親へ問い合わせるつもりらしく、
「もうっ、二人ともっ!////////」
赤くなっては答えたも同然。
アハハと明るい笑い声が立って、今年もこんな雰囲気のお三方であるようだぞと、
中庭の山茶花の茂みに遊びに来ていた小鳥が、ぱたたっと飛び立った寒の入りの昼下がり…。
〜Fine〜 17.01.04
*菊千代の機械の体を融通した正宗さんてもう出してたかなぁ?
ちょっと記憶があいまいで、既出だったら相すみませぬ。
先のお話の後半といいますか、
いなかったシチさんはシチさんで
別の恰好で恋しいお人と逢ってたということでvv
めーるふぉーむvv


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